聖恵(めぐみ)ビハ−ラ(緩和ケア病棟) ごあいさつ


安心(あんじん)

理事長・院長  安松 聖高

聖恵ビハーラ(緩和ケア病棟)は、仏教の理念に基づいた緩和ケア病棟であり、進行がんの患者様の身体的、心理的、社会的な苦痛のみならず、スピリチュアルな苦痛も緩和することを使命としています。そのため、医師や看護師、さらに臨床宗教師等の多職種のスタッフが各々の専門性を生かし、チームで全人的ケアを提供させて頂きます。このようなチームケアの中で、積極的に抗がん治療を行うのではなく、寿命を無理に引き延ばすことも縮めることもせず、自然から賜った寿命の中でQOL(生活の質)を向上させることを重視しています。

また、大切な人を亡くされた方に対しては、共に逝きし人の祈りや願いを受け取り、感応道交するような、まさに「回向」に於いて悲哀を癒して頂けるよう、グリーフケアの場所も調えてまいる所存です。

さて、山崎弁栄上人は、「ミオヤしらば四面楚歌の中ながら心のおくに極楽ぞあり」と詠み、鈴木格禅老師は末期がんの死の床にあって、「身を削る痛みも弥陀の慈悲の縁」と心境を述べられました。絶望の只中ゆえに絶対なる希望が相即しているようにも観じられます。いずれも崇高な安心(あんじん)の境涯が伝わってくる歌であり俳句であります。

安心(あんじん)に根ざす聖恵の精神が、聖恵ビハーラ(緩和ケア病棟)全体に、仄かに、微かにでも、おのずと漂うように祈りつつ、悲境に際して如何に処していくかを説く仏教の具体的実践である「臨床仏教」の実現に日々、勤めてまいります。


こころ安らぐ時間を過ごして頂きます。

緩和ケア部長 犬塚 貞明

私は福岡で生まれ育ち、平成元年に長崎大学を卒業し、九州大学第2外科に入局しました。これまで外科医師として多くのがん患者様とともに、手術や抗がん剤治療で闘ってまいりました。その後、「緩和ケア医師」として、がんに苦しまれる患者様のお役に立ちたいと考え、現在に至ります。

聖恵ビハーラでは、臨床宗教師(ビハーラ僧)が仏法の教えをもとに、こころ安らぐ時間を過ごせるよう支援します。病棟施設にも仏教的手法を多く取り入れています。そのような環境ではありますが、我々医療スタッフは宗教的な介入を望まれない患者様へも、標準的かつ最善の緩和医療を実現すべく、身体的苦痛を和らげ、精神的心理的サポートに努めます。


共にあゆむ そして共に笑顔で

看護師長 出口 純子

私たちは、基本方針である仏教の慈悲と慈愛の精神を基盤に、心が安らぎ、心温まる看護を提供してまいります。温もりを大切にする手を当てるケアは、子を思う母親のような愛に満ちたケアであるように心掛けています。

患者様とご家族、お一人お一人に最期まで寄り添い、家族も一緒にケアに参加していただき、患者様と家族の絆が深まるように支援します。

穏やかで有意義な時間を過ごして頂くために、身体的、精神的、社会的、スピリチュアル(霊的)な全人的苦痛を和らげると共に、患者様・ご家族の多岐にわたるニーズに柔軟に対応できるよう、チーム医療で体制を整えています。
ビハーラ病棟は、八角堂や祈りの間があり、安心し癒される空間で、患者様とご家族が一日一日を大切にして、共に過ごす事が出来る環境を整備しております。

ゆとりある環境の中、看護師は、優しさと温かさのある看護と専門性を常に追求し、すべての患者様がまるで自宅にいるかのような、そしてご家族に見守られているような生活が送れるように、努めてまいります。


〜ぬくもりと安らぎ〜

臨床宗教師

私たちは誰も逃れることのできない生老病死の世界、また「明日何が起こり得るか分からない」という無常の世界で生きています。この厳しい現実のなかで、仏教は「“今”を精一杯生き抜きなさい」と私たちに教えて下さっています。共に今を生きることに感謝しながら、お一人お一人の言葉にならない苦しみや悲しみ、そして思いに寄り添わせていただければと存じます。

聖恵ビハーラの「ビハーラ」という言葉は、古代インドの言葉で、「安息の場所、寺院」という意味を持っています。聖恵ビハーラには、本堂である「八角堂」と「祈りの間」があり、お参りしていただきながら気持ちを落ち着けていただける場所があります。落ち着いた雰囲気のなか、仏様に見守られながら、「願われたいのち」を共に歩ませていただければと存じます。患者様、ご家族が穏やかに、そして何よりも、安心できる「ぬくもり」と「安らぎ」のビハーラの実践に勤めてまいります。